共依存とは
共依存とは、自分自身に焦点があたっていない状態のことです。
たとえば――。
自分の価値を、周囲の基準だけを頼りに判断する。
自分がどうしたいかではなく、周囲の期待に応えることだけに必死。
他の人の問題を解決することに、いつも一生けんめい。
誰かの役に立とうとするのは、もちろんいいことです。
周囲の人に認めてほしいとか、好かれたいと思うのも、自然なこと。
けれどその結果として、自分自身がどんどん苦しくなったり、一生けんめいやればやるほど状況が悪化することがあります。
そんなとき、背景に共依存の問題があるかもしれません。
◆共依存という言葉、どうやって生まれた?
共依存(Co-Dependency)は、アメリカで生まれた言葉です。
1970年代、アルコール依存症者の妻たちが苦しむ様子を目にした援助者が、自然発生的に使い始めました。
Dependencyは依存症、Coは共同・同等といった意味です。
妻たちは、夫の飲酒問題を何とか解決しようとして、説教したり、監視したり、失敗の尻ぬぐいをしていました。
崩れかけた家庭を、夫に代わって支えようと必死でした。
ところが、妻が必死になればなるほど、問題の当事者である夫は、自分の健康や社会生活や家族のことに責任を持たなくなり、ますます飲むという悪循環が生じていたのです。
そのため妻は、ますます夫のことで頭を悩ませ、疲れ果て、なぜこんなことになってしまったのかわからずに、怒り・悲しみ・絶望・混乱の中で途方にくれていたのでした。
「共依存」という言葉は、こうした妻をはじめ依存症の家族にとって、「何が起きているのか」「どうすればいいのか」を考えるきっかけとなりました。
そのカギをひとことで言えば「相手ではなく自分に焦点をあてる」です。
やがて共依存の概念と回復のための知恵は、依存症の家族に限らず、周囲との関係に悩む多くの人や、さまざまな分野の対人援助職にとっても、健康さを保つための指針として広まっていったのです。
◆あなたにこんなこと、起きていませんか?
次のような傾向に思いあたったら、あなたの中に共依存の課題があるかもしれません。
犠牲になっていませんか?
誰かとの関係で、自分ばかりが責任やリスクを負ったり、気持ちを押し殺したりしていないでしょうか。
乗り出しすぎていませんか?
相手が決めたり考えるべきことまで、やってあげたり、指示したりしていないでしょうか。
その結果、相手の甘えを招いていないでしょうか。
自分を追い立てていませんか?
困っている人を助けないと悪いという罪悪感、みんなに好かれなければダメだという考え方、完ぺきな自分にならなければという思いこみなどで、自分を過剰に追い立てていないでしょうか。
共依存―5つの核症状
共依存やトラウマの治療施設として世界的に有名な「メドゥズ」のプログラム・ディレクターであるピア・メロディは、共依存の「核となる症状」を次のようにあげています。
これはそのまま、アダルトチルドレン(AC)の課題でもあります。
1.セルフエスティーム(自尊心)の問題
自分が生まれながらに持っている価値を子ども時代に認めてもらえなかったため、人と比べて上か下かという外の基準を頼りに生きようとする。
内的な価値の手がかりがない。
2.境界の問題
子ども時代に自分をきちんと守ってもらえなかったり、親からべったりくっつかれたために、適切な境界線の引き方がわからない。
壁を作って孤立したり、境界がないまま相手に侵入され蹂躙されてしまう。
3.現実性の問題
自分をそのままの姿で認められないため、完ぺきならOK、少しでも間違うとダメ、といった白黒思考に陥る。
人間は間違うこともあれば弱いところもあり、感情も揺れ動くものだ、という現実を認められない。
4.依存の問題
子ども時代に自分のニーズが満たされなかったり、親が先回りして何でも与えてしまうために起きる。
「人に頼ることをせず、なんでも自分の力でやろうとする」か、「自分の責任で自分のニーズを満たせず、他人に頼ってしまう」かのどちらかになる。
5.中庸の問題
適度な自己表現やセルフコントロールが難しい。
自分の衝動や欲求を吟味することができず行動に移したり、がちがちに我慢して抑えすぎたりする。
もっと「自分らしい生き方」のために
まずは安全な場・信頼できる相手のもとで、抑えていた気持ちを言葉にしたり、つらさを受けとめてもらう体験が大きな力になります。
そこを出発点にして、「自分を苦しくさせるような生き方」を変えていく必要があります。
長年のパターンを変えるのは、簡単ではありません。
新しいスキルを知って、練習しながら少しずつ身につけていくのです。
共依存をやめるには?【親子編】
親子関係の共依存が子どもの未来に悪影響を及ぼすと言われていますが、いったいどうしたら共依存をやめることができるのでしょうか?
この項目では、親子関係における共依存からの抜け出し方を解説します。
アダルトチルドレンの方も参考にしてみてください。
少しずつ距離を置く
親子共依存から抜け出すためには、少しずつ物理的な距離を取り始めることが大切です。いきなり関係を断ってしまうと、相手も自分も不安定になる可能性があるため「少しずつ」ということがポイントです。
まずは、連絡の頻度や帰省回数を減らすなど、接触の機会を減らしていきましょう。お互いに自分の時間を増やし、相手の存在がなくても過ごせるようにしていくことは依存関係から抜け出す一歩です。
「過去」と「今」は違うことを認識する
子ども時代の記憶が鮮明ではないとしても、その記憶(潜在意識)が基となり気持ちにブレーキがかかることがあります。もしかすると子どもの頃に「ダメ」と反対された経験があるのかもしれません。こうした過去の経験により行動や気持ちにブレーキがかかりやすくなっていることも考えられます。自分の人生を楽しむためにも「過去」と「今」の違いを認識し、前向きかつ具体的に考えてみるのもオススメです。
共依存をやめるには?【カップル編】
次にカップル・夫婦編です。
共依存は親子関係ではなく、ある程度大人になってから恋人との関係に悩み、共依存に気づく方も多くいます。同じ過ちを繰り返したくないという思いでカウンセリングを受ける人もいれば、自分でこの記事のような情報を調べて「もしかして」と考える人もいるかもしれません。
この項目では、恋愛共依存から抜け出す方法を解説します。
一度距離を置く/別れる
「できない!」と今思った人は既に共依存かもしれません。
恋愛共依存も相手との距離感が非常に大切です。なぜなら恋人と離れることに恐怖を感じていると、相手の行動を束縛したくなることがあるからです。別れたくないのなら尚更、距離を置いて冷静になることが大切です。もし今の恋人でなくても、ただ誰かが傍にいてほしい...というのであれば、今の恋人とは別れてみるのも、環境を変えるためにはおすすめです。
「対象の人と距離を置くこと」が恋愛共依存をやめる方法です。
自分を大切にする
彼氏などパートナーと距離を取ったうえで、自分を大切にすることが必要です。共依存傾向のある人は自分を受け入れられない、つまり自分を否定している方が多いと言われています。自分の趣味や楽しい時間をつくるなど恋愛以外で夢中になれることを見つけ、自分を大切にしましょう。
適切な対人関係をつくろう
親子共依存、恋愛共依存に共通する必要なことは、「1人でいる勇気」と「適切な距離で人を頼ること」です。今の苦しさから抜け出すには、これまでしていなかったことを体験することも大切になります。この項目では、その具体的な方法を紹介します。
1人で行動する、決断することを増やす
共依存の人は、1人でいることが不安で、誰かに決めてほしいと思う傾向があります。そのため「1人でいる」ことを意図的に増やすことが必要です。また、親やパートナーがあなたの行動を制限していた場合、決断力が弱まっていることがあります。外出先や、新しく始めたいことなどを、自分で決めるようにしていきましょう。
カウンセラーに相談する
カウンセラー(公認心理士、臨床心理士など)はあなたを客観的に見て、適切な距離をつくる見本となります。必要に応じて助言もしてくれますが、決して従わせようとはしません。今まであなたが経験したことのない対人関係を築くことができます。
恋愛依存が強い方は、まずは同性のカウンセラーの方がよいかもしれませんね。
共依存の改善方法
共依存の人は「適切な距離を取る」「自分を大切にする」「過去と今を区別する」ことが大切だと解説しました。しかしそれだけでは解決しない場合もあります。
それは、他の特徴もあわせて「境界性パーソナリティ障害」と診断されることがあるからです。この項目では、距離を取ることなどの他に必要だと言われている治療法(心理療法)を解説します。
関係性の修復
家族療法は関係性の修復のためのアプローチとして良いものだと考えられます。なぜなら共依存は本人の問題ではないからです。家族療法は主に親やパートナーとカウンセリングを受け、間にカウンセラーが入り修復していく方法です。しかし、一緒にカウンセリングを受けることは現実的ではないこともあるでしょう。
その場合、次で紹介する認知行動療法や対人関係療法も役立つかもしれません。
自分自身を変える【認知行動療法】
共依存とは心理状態のため、自分自身の捉え方や考え方、感じ方を認識し修正していくことで改善が見られると言われています。認知行動療法は、考え方の修正をするアプローチのことを言います。エビデンスがある心理療法なので信頼性も高いです。
また認知行動療法をご自身でできる書籍も出ていますので参考にすると良いでしょう。今の問題が解決しても、また似たようなことが起きる可能性もあります。こうした書籍を参考に自分自身を変えることで、次に問題が出る可能性を未然に防ぐことができるかもしれません。
共依存を抜け出して幸せな人生を
今回は「共依存」をテーマに、共依存に陥りやすい人の特徴や原因、改善方法などを解説しました。いかがでしたか?共依存から抜け出すために大切なことは「自分で行動する」「自分を信じる」ことです。本記事が、少しでも共依存に悩む人の手助けになれば幸いです。
行動するかは自分次第
これまで誰かに依存してきたのであれば、これからは依存せずに生きることが幸せになるためのカギとなります。カウンセラーにアドバイスをもうったとしても、行動に移せるかはあなた次第です。共依存から抜け出すために、行動する勇気を持ちましょう。
共依存は抜け出すことができる!
共依存から抜け出すことは可能です。しかし、抜け出せるかどうかは最終的に自分自身にかかっています。自分と向き合うことは辛いこともあるでしょう。しかしそこで諦めずに自分を信じて、周りを信じることで、共依存から抜け出す道はひらけていきます。
1人で抜け出すことは容易ではないので、カウンセラーなど専門家にサポートしてもらうことも適切な対人関係づくりのためにオススメです。