発達障害と“グレーゾーン”はどう違う?診断はつかないけれど生きづらい…境界線とは (1/2)

発達障害は“このタイプだけ”と単純に分けられるものではなく、複数の特性を持ち合わせることも多いです。そのため、診断名よりも“どんな特性があり、どんな支援が必要か”に目を向けることが大切です。

なお、上記のポイントは誰にでも当てはまることがあるため、“これだけで発達障害と決めつけることはできません。発達障害と認定するには医師による診断が必要です。

「指示が理解できない」「説明が長い」「ズレている」…職場における“大人の発達障害のサイン”と対処法 (2/4)

職場で起きがちなトラブルと対処法

ここではよくあるケーススタディを見ていきます。本人目線、周囲目線で見た対処法もお届けします。

指示を整理するのが難しく、仕事で誤解や行き違いが生じてしまうことがある

例: 上司から「この資料、来週までに仕上げて」と言われたが、期日を誤解して「週明け」ではなく「週末」までと勘違い。結果、納期に間に合わなかった

背景: ADHDやASDの特性で、曖昧な表現や複数の情報を整理するのが苦手

対処法
• 指示を受けたら、必ず「復唱」して確認する
• 期日や手順を具体的にメモに残す
• 上司や同僚は「数字」「期限」「手順」を具体的に伝える。「ここまでできたら報告して」と小さなゴールを設定する

単純な業務でも指示が理解できず、質問が多くなり時間がかかる

例: 会議用の資料をコピーするよう頼まれたが、「何部必要か」「両面印刷か」「どこに置けばよいか」など、細かく質問を繰り返してしまう。上司からは「簡単なことなのに」と苛立たれてしまった

背景:
• ASDの特性で、曖昧な表現や状況判断を伴う指示を理解しにくい
• ADHDの特性で、複数の情報を整理できず抜け漏れを恐れるため確認が増える
• 過去の失敗体験から「間違うくらいなら確認した方が安心」と考えている

対処法
指示は「部数・印刷方法・納品場所」など具体的に数字や条件をあらかじめ明示(メールなどにまとめるとよい)

タスクを同時に処理できず、仕事が滞りやすい

例: メール返信、電話対応、資料作成が重なり、どれから手をつけてよいかわからずパニックに。結果、どの業務も中途半端に

背景: ADHD特性で、マルチタスクの切り替えや優先順位づけが苦手

対処法
• タスクを「今すぐ/今日中/今週中」など3段階に分ける
• 付箋で見える化し、一つずつ終わらせる
• 上司は「まずこれから」と優先度を明示する

背景や細部まで詳しく話すため、情報量が多すぎて相手に伝わりにくい

例: 報告やメールが長くて要点がわからない。何を伝えたいのか不明

背景: ASDやLDで文章構成が苦手な場合や、ADHDで話が脱線する場合がある

対処法
• 「結論→理由→補足」の型を共有する
• メールや報告書はテンプレートを活用
• 本人に“要約力”を身につけさせるため、練習の場を設ける

臨機応変な対応やマニュアル外の業務では、混乱しやすいことがある

例:柔軟な発想や即興対応が必要な職場では力を発揮できない

背景:ASD傾向では“枠組みのある仕事”が得意だが、“正解が一つでない業務”は混乱しやすい。

対処法
• 単純明快なルールのある作業を中心に任せる
• 臨機応変さが必要な仕事は、チームで分担する
• 本人の「強み」を見極め、役割を工夫する

業務中やミーティングで静かにできない、うろうろすることが多くなる

対処法
• 本人には「会議の途中でどうしても動きたいときは、一言断ってから離席する」などルールを設ける
• 会議は必要以上に長引かせず、短時間+休憩を挟む 形式にする
• 業務中は「立って作業できるデスク」や「歩きながら考える時間」を取り入れると集中が続きやすい
• 周囲は「落ち着きのなさ=やる気がない」ではなく、特性の一部と理解する


• 社内ミーティングの最中に席を立って歩き回り、同僚から「落ち着きがない」と思われてしまった
• デスクワーク中に何度も席を立ち、資料を取りに行ったり、他部署に顔を出したりして集中できない

背景
• ADHDの特性で「じっとしていること」が難しく、体を動かさずに長時間過ごすと強いストレスを感じる
• 衝動性から「今思いついたことをすぐ確認しに行く」など行動に出やすい
• ASD傾向がある場合、会議室の環境(音・照明・空調など)が過敏に感じられ、落ち着かない原因になることもある

「指示が理解できない」「説明が長い」「ズレている」…職場における“大人の発達障害のサイン”と対処法 (3/4)

場にそぐわない発言をしてしまう


• 同僚のプレゼン後に「思ったより上手だったね」と声をかけたが、相手は「下に見られていたのか」と不快に感じた
• 後輩に「前よりマシになったね」とフィードバックをしたところ、本人は落ち込んでしまった

背景
• ASDの特性で「自分が思ったことを率直に表現する」ため、悪気なくストレートな言葉を使ってしまう
• 言葉のニュアンスや相手の受け取り方を想像するのが難しく、「余計な一言」になりやすい
• ADHDの衝動性が加わると、場面に合わない言葉が瞬間的に口から出てしまう

対処法
• 本人は「褒めるときはポジティブな言葉だけにする」「比較する表現は使わない」など具体的なルールを持つ
• 周囲は「悪意のある発言ではない」と理解したうえで、必要なら「こういう表現の方が伝わるよ」とフィードバックする
• チーム内で「率直さを強みとして活かす場」と「オブラートが必要な場」を整理して、適切な場にアサインする

会話で盛り上げようとして“自慢風”や“自分の話ばかり”になってしまう


• 同僚が「最近ジムに通い始めた」と言ったときに、「自分は週5で筋トレしてベンチプレス○kg上げてる」と返してしまい、相手が引いてしまった。
• 飲み会の席で「○○業界に知り合いがいる」「有名人とつながりがある」と繰り返し話し、同僚から「マウントを取られている」と思われてしまった。

背景
• 「共通の経験や話題で距離を縮めたい」「強みを知ってほしい」と前向きな気持ちだが、周囲の温度感とずれてしまう
• ADHDの特性で、相手の話を最後まで待てず、自分のエピソードを勢いで挟んでしまう

対処法
• 本人は「相手が話し終わるまで待つ」「相手の話に質問を返してから自分の経験を補足する」ことを意識する
• 会話では「すごいね」「面白そう」と共感を先に示し、自分の話は短めにする
• 周囲は「マウントではなく共感表現の一種」と理解し、会話の流れを自然に切り替える工夫をする
• 職場では、本人が強みを発揮できる“発表の場”や“知識を披露できる役割”を用意することで、雑談での“自慢”が減りやすい

書類作成や数値処理で繰り返しミスをしてしまう

例:
請求書の金額を入力ミスし、取引先に迷惑がかかった
何度も誤字脱字をしてしまう

背景: 学習障害(LD)による読み書きや計算の苦手さ

対処法
• チェックリストを作り、必ず複数回確認する
• ミスが出やすい業務はツール(自動計算シートなど)を活用
• チームでダブルチェックの仕組みを整える

“性格の問題”と決めつけてしまうと、本人はさらに自信をなくしてしまいます。特性を理解し、具体的な指示や環境調整を行うことで、チーム全体のパフォーマンスが安定しやすくなります。

状況に応じて、職場として専門職等の心理的支援を受けることのできる体制を整えることも有効です。

「指示が理解できない」「説明が長い」「ズレている」…職場における“大人の発達障害のサイン”と対処法 (4/4)

こんな意見も……「発達障害の人に配慮する余裕がない」問題、専門家の回答は

とはいえ、現場では「対応する余裕がない」という声も聞きます。業務指示を行う人に負担が集中しないよう、どのような方法が望ましいでしょうか。清水先生の意見を伺いました。

このように、配慮⇒個性に応じたマネジメント⇒組織の生産性向上と発想を切り替えることが求められます。また、特定の者に過度な負担が集中しないためにも、発達障害の特性を持つ人に対し業務指示する立場にある人だけでなく、他のメンバーや人事部門などを含めたチームで対応する体制づくりが必要と考えます。

清水先生:こうした意見は、現場の切実な声として理解できます。しかし、初期の配慮や工夫によって、職場全体の業務効率が改善するケースも多いと考えます。

たとえば、指示を明確化したり、タスクを見える化したりといった工夫は、発達障害に限らず誰にとっても分かりやすいマネジメントとして機能します。

また、発達障害の特性を持つ人も、強み(記憶力の良さ、集中力の持続、正確性など)を発揮できる場面がありえます。個々の特性に合った業務配置ができれば、むしろチームとしての総合力向上につながる可能性があります。



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